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Climate & Environment

環境を汚染する金属や材料でサステナブルな自動車は造れない

ガソリンやディーゼル油を使わないことにより、EVの生涯排出量(製品寿命まで使用した場合の排出量)は内燃機関(ICE)自動車よりも大幅に少なく、EVは走行時にCO2を排出しません。しかし、その製造工程は(少なくとも、今はまだ)そうではありません。

アルミニウム

アルミニウムの製造時に排出される温室効果ガスは世界全体の約2%です。ただしその排出原単位は、鉄鋼よりも大きい数値となっています。化石燃料を大量に使用するその生産工程における直接的なCO2排出量全体の90%以上は、精製・製錬の段階で排出されます。また、アルミニウムの原料であるボーキサイトの採掘は、土壌を汚染する場合があります。

バッテリー

EVの動力源は大容量のバッテリーパックです。ニッケル、コバルト、リチウムなどのバッテリー用鉱物の生産は、大量のCO2を排出し環境に害を与える可能性があり、地域コミュニティの権利に悪影響を及ぼします。また、こうした鉱物の需要は急増しています。

鋼材アルミニウム

鉄鋼産業は世界の温室効果ガス排出量の7~9%を排出しています。また鉄鋼は、現在の標準的な自動車の材料の約65%を占めます。鉄鋼よりも気候影響の大きい工業材料は他にありません。

Human Rights & Responsible Sourcing

いつまでも不公正を存続させてはならない

先住民族の権利

先住民族は長きにわたり、土地や世界の自然資源を守る管理者の役割を果たしてきました。エネルギーの移行を促進するために必要な資源の半分以上が、先住民族の住む土地やその隣接地にあります。先住民族には自己決定の権利があり、自らの土地や領域で実施される予定の事業や活動について、自由で事前の情報に基づく合意(FPIC)を行う、もしくは合意を留保する権利があります。

自動車サプライチェーンに関連する事業が、先住民族の領域内でその合意なしに実施される例はあまりにも多く、時には先住民族が先祖伝来の土地から立ち退かされることさえあります。採掘を伴う事業はその土地の資源も汚染するため、これらの地域コミュニティの食料や水、生活、文化に対する権利にも影響が及びます。公正なサプライチェーンにおいては、先住民族の自己決定の権利ならびに自由で事前の情報に基づく合意(FPIC)に関する権利が尊重されなければなりません。

鉱物の採掘

アルミニウムと鉄鋼を製造するには、大量のボーキサイトと鉄鉱石が必要です。EVへの移行においては、こうした原料の必要量が増え、さらにコバルト、ニッケル、リチウム、マンガン、亜鉛、銅などの移行に不可欠な鉱物も必要になります。こうした鉱物の一部は、武力紛争や、暴力、強制労働、またはその他の人権侵害や環境破壊が見られる地域で調達されており、調達活動がそうした問題を悪化させることも珍しくありません。

公正なサプライチェーンは、継続的、能動的かつ受動的なデュー・ディリジェンスを必要とします。自動車メーカーは、主要な鉱物バイヤーとしての立場を生かし、環境ならびに先住民族、労働者、地域コミュニティの権利を守る採掘基準を引き上げることができます。

責任ある鉱物調達においては、自動車メーカーのサプライチェーンで使用される鉱物とそのリスクや影響に関して、採掘から製錬、精製、そして製造に至るすべての段階で、より高い透明性と幅広い開示を確保することも必要とされます。

最後に、自動車メーカーは一次材料の必要量を削減する必要があります。これは、リサイクルの拡大、材料効率に関する戦略、EVバッテリーの小型化、鉱物使用量の少ないバッテリー材料の研究開発などの介入を通して達成することが可能です。

労働者の権利

鉱山作業員からアルミニウム工場の従業員、車両組立に携わる労働者に至るまで、自動車サプライチェーンのすべての段階を人が支えています。しかし残念なことに、自動車サプライチェーンにおいては、差別や強制労働、低賃金、安全でない労働環境を黙認する企業が非常に多く、ほぼ世界中に存在します。公正でサステナブルなEVへの移行を実現するためには、サプライチェーン全体にわたり労働者の権利が必ず尊重されるべきです。

「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」によれば、公正な職場には、結社の自由および団体交渉権の効果的な承認、あらゆる形態の強制労働の禁止、児童労働の実効的な廃止、雇用および職業における差別の排除、安全で健康的な労働環境が求められます。自動車メーカーは、自社の全事業活動およびサプライチェーン全体にわたって、これらの基本的原則および権利が確実に守られるようにしなければなりません。

私たちのビジョン

未来は、すべての自動車が次のような形で製造される自動車産業

公正に

サプライチェーン全体にわたり、先住民、労働者、地域コミュニティの権利を尊重し、向上させながら製造される。

サステナブルに

サプライチェーン全体にわたり、環境の健全性と生物多様性を保護・回復すると同時に、効率的な資源利用およびリサイクル材料含有率の増加を通して一次資源の需要を削減しながら製造される。

化石燃料フリー

完全電動車として、化石燃料を使わないサプライチェーンによって製造される。