非常に重要な移行
自動車産業の抜本的な転換は、地域コミュニティ、労働者、先住民族、環境、そして気候のためにサプライチェーンを再構築する、前例のない機会をもたらします。重工業のインフラの大半は、この10年の間に再投資が必要になるでしょう。同時に、エネルギーの移行に向けて新たなサプライチェーンも構築されつつあります。未来の自動車サプライチェーンから、化石燃料も、環境破壊や人権侵害も確実に排除するためには、これらの移行は時期の限られた、逃すことのできない重要なチャンスです。
電気自動車(EV)への移行はもはや必然であり、それは好ましいことです。しかし、私たちは化石燃料車に別れを告げるとともに、環境に悪影響を及ぼすサプライチェーンも変容させる必要があります。新世代のEVが、人や地球に害を与える方法ではなく、誰もが恩恵を受ける方法で製造されるようにしなければなりません。
サプライチェーン全体にわたり、先住民、労働者、地域コミュニティの権利を尊重し、向上させながら製造される。
サプライチェーン全体にわたり、環境の健全性と生物多様性を保護・回復すると同時に、効率的な資源利用およびリサイクル材料含有率の増加を通して一次資源の需要を削減しながら製造される。
完全電動車として、化石燃料を使わないサプライチェーンによって製造される。
ガソリンやディーゼル油を使わないことにより、EVの生涯排出量(製品寿命まで使用した場合の排出量)は内燃機関(ICE)自動車よりも大幅に少なく、EVは走行時にCO2を排出しません。しかし、その製造工程は(少なくとも、今はまだ)そうではありません。
アルミニウムの製造時に排出される温室効果ガスは世界全体の約2%です。ただしその排出原単位は、鉄鋼よりも大きい数値となっています。化石燃料を大量に使用するその生産工程における直接的なCO2排出量全体の90%以上は、精製・製錬の段階で排出されます。また、アルミニウムの原料であるボーキサイトの採掘は、土壌を汚染する場合があります。
EVの動力源は大容量のバッテリーパックです。ニッケル、コバルト、リチウムなどのバッテリー用鉱物の生産は、大量のCO2を排出し環境に害を与える可能性があり、地域コミュニティの権利に悪影響を及ぼします。また、こうした鉱物の需要は急増しています。
鉄鋼産業は世界の温室効果ガス排出量の7~9%を排出しています。また鉄鋼は、現在の標準的な自動車の材料の約65%を占めます。鉄鋼よりも気候影響の大きい工業材料は他にありません。
自動車サプライチェーンにおいては何十年にもわたり、環境破壊と人権侵害が横行してきました。EVへの移行は、石油産業による環境破壊と人権侵害を終わらせるチャンスです。しかし、自動車メーカーによる積極的な介入がなければ、EVのサプライチェーンにおいてもこうした破壊や侵害が繰り返される恐れがあります。
EVの製造に必要とされる移行鉱物には、コバルト、ニッケル、リチウム、銅、マンガン、亜鉛などがあります。アルミニウムの原料であるボーキサイトや、鉄鋼の原料である鉄鉱石も使用されます。こうした多くの鉱物の採掘・精製には、激しい紛争や、労働者や地域社会に対する人権侵害の悲惨な歴史があります。
電化への移行を促進するために必要な資源の半分以上が、先住民族の土地やその隣接地にあります。しかしこうした資源を採掘する企業は、先住民族の土地や領域の権利、ならびに自由で事前の情報に基づく合意(FPIC)の権利を侵害することが少なくありません。
差別、低賃金、強制労働ならびに安全でない労働環境は、多くの自動車メーカーにおいて、自社の事業および世界に広がるサプライチェーン全体でまだ解消されていない問題の一部にすぎません。
自動車産業の抜本的な転換は、地域コミュニティ、労働者、先住民族、環境、そして気候のためにサプライチェーンを再構築する、前例のない機会をもたらします。重工業のインフラの大半は、この10年の間に再投資が必要になるでしょう。同時に、エネルギーの移行に向けて新たなサプライチェーンも構築されつつあります。未来の自動車サプライチェーンから、化石燃料も、環境破壊や人権侵害も確実に排除するためには、これらの移行は時期の限られた、逃すことのできない重要なチャンスです。